2011年9月23日金曜日

「自分で決めようぜ。」



朝だ。

真東から太陽が昇ってくる
空が白みオレンジの輪郭が
ある一瞬を境に
鮮烈な一筋の光線から広がり始めていく
朝焼けだ

このカーブした眼球の
視野の広さは哺乳類一だから
美しく続く生命の営みを見逃しはしない

渓谷に朝日が広がり
やがて山肌を埋める鮮やかな緑色の樹木が現れた
光は行く手を指し示すように見えなくなるその先までを照らし
小さな光がきらめくと足元に微かな風を感じ始める

あのきらめきの所まで僕は何度も行ってみたことはある
だがその先には誰も辿り着いたことはなく
いままでほんの数羽だけがあの黒く果てしなく高い峰を越え
『自由』になったと言い伝えに聞いた




「自由?」





「何だ? それ。




自由は自由さ。わかんねえのか?
僕は誰に聞いても鼻で笑われて
取り合ってもらえず
数年前に巡り会ったある世捨て鳥に
尋ねると彼は言った。




「『自由』は食い物に似ててさ
『自由』になったヤツだけが味わう事ができる、
だから、夢みたいなもんだね。」













風はいつのまにか僕の羽毛をやさしく
なで始め断崖絶壁のこの頂きから
飛び立つその瞬間は
僕にしか感じることはできず
誰にも頼ることなどできなかった
そういえば口癖のように




「自分で決めようぜ。」




と彼は言っていた




flux  to be continued.