2011年12月15日木曜日

「 カモメのジョナサンの話はきいたことある?」





「  カモメのジョナサンの話はきいたことある?」



「あるある、ジョナサンはとぶことに命かけてチャレンジしててそればっかなんだけど
他のカモメは毎日毎日食うために飛び回らなきゃならないんだ、物語のなかでは。   」


「やっぱよくおぼえてるね、なんでみんな物語を知ってるんだろうね?」


「なんだか面白いんだよね。」

「そう、引きつけられる何かがあるんだよな、たぶん。」


僕らはまたもや突然雲ひとつない
大空にいた、一瞬どこかで同じことが
あったような気がした。

「肩の力を抜こう、翼はやわらかくと想像しよう、
あわてなくていい、それで十分この気流に乗れる。」

爆音が急激に耳の中に入ってきたが、彼の声ははっきりと聞き取れ
たずねようとしたが、気流の鳴る音は止まず僕は必死で怒鳴ったけれども
それもかき消されて耳の中で響く声の言う通りにするしかなかった。

翼は柔らかくと想像してみる
イマジネーションが浮かぶと
いつのまにか気流は沈黙し
ほおをなでる風を感じることができた
僕にも気流の厳しい風に乗ることができたのだ



富士山の頂上が間近に迫り朝日に
照らされ純白の光を放っている

「今その翼を使っているのは
あなた自身以外の誰でもない。
いままではイマジネーションがやってこなかったから、
食べるための毎日にうもれていたんじゃないのか?」

彼の瞳がキラリと光ったそのとき
山頂付近で金色の翼を操りながら悠然と飛ぶその姿が目に入った。

「僕は彼にただ同調すれば
 いいことに気がつくまで、ものすごく苦労した。
優れた僕ができない筈はないと思いたくて
それまでのクセや習慣で
僕は心の中で彼と勝負をしてしまっていたんだ」





太陽から射す光は
時間を経るごとにあふれ出し
その明るさの度合いを増していた。

青ざめたその空の果てに
富士山が山肌を積雪に白く輝かせて
その切込みの線が幾筋も降りていた

限りない青さを背にしたその先にも
限りない何かがあると告げているかのようだった
その何かは毎日のなかで失われても
欲してやまないことにちがいなく

ニーハイソックスをたくし上げる女子高生も
表参道でハーフミラーに全身を映しながらウォーキングするモデル風の女子も
腰が曲がりキャスター車を押すおばあちゃんもが
求めても得られないその尊い何かだった

それはあふれる明るさと同じく、
彼女たちが生まれる前から確かにそこにあった
そしてまた生まれたときから
そっと彼女たちに寄り添い
誰もそれに気づかなかったが
それでもその何かはただ沈黙し母親のように優しく
見守り続けていくことを決めていたのだった。





「負けるもんかと力が入ったそのとき、これ
このイマジネーションがやってきたんだ。」

僕は驚き押し黙り
それを見た。
それは確かにあり
僕に強烈に迫ってきた。




「え?」














「厳しい練習はもうやめ
だれもかれもと争わず
今このときの
戦いすべてを終わらせて
本能に乗ろう。」
 
 

Wind  flux.