2011年10月7日金曜日

「だから 誰も風に乗れない。」





僕がたった一人で入射角ギリギリの
超高速気流突入練習に
はいっていたとき

風を感じ風をとらえ
風になり風が消え
僕自身が消えたそのときに

彼は気流の鳴る音の中
僕の横に忽然と現れ
目が合った瞬間
こう言った。


「うまく飛ぼうとするから
 失敗する、しかし今なら乗れる。」



何?と思ったそのとき
またもや忽然と彼は
風の中に掻き消えた。

驚いた僕は
急激に失速し
丸めた翼がゆらぎいきおい強風につかまり
大きく両翼は開いてしまい
そのまま急降下し
態勢を立て直せないまま
重力に強く引っ張られ
固い岩に叩きつけられた


まぼろし?
でもはっきり聞いたよな
彼の言う通り
あのとき僕はギリギリの
全集中力を翼の羽毛に費やそうとした
風はどこへどう動くのか
微かな違いを探していたのだ

それをみたそのときと
僕が消えたそのときと
僕が風になったときと
彼が話しかけたときが
一瞬で同時だったのだ。

彼が言う通り
僕はうまく飛ぼう
うまく飛ぼうとした

それが風の一瞬の変化を
見逃すワケだったのだ。

しかし
うまく飛ぼうと思った
その瞬間が命取りとは!
たしかに風の動きを感じる
スキがそこで生まれる

でもさ、誰でも思うだろ,それ位さ。






「誰でもおもう,だから 誰も風に乗れない。」











どういう訳か
挨拶の代わりにそう言い
彼はまた忽然と消えた。



Flux  to be continued.