2012年12月22日土曜日

「すみません、明日はむずかしいので2週間後でお願いできませんか?」



電話が鳴った。

「担当変わったって聞いたんで
連絡してます、引き継ぎされてると思いますけど、明日見積り出ますか?」

「どちらの件でしょうか?」


「東浦和第三ですけどね、
聞いてなさそうですねえ、大丈夫スか?」

「すみません、明日はむずかしいので2週間後でお願いできませんか?」

「あー、またですか。困るんだよね、先延ばしされるとこちらもかばいきれないんだよねー、ったく。」


地デジ受信障害関連の仕事は
こんな調子に始まったのだが
これぐらいはマシな方で
唐突に怒鳴られる
ようなヒドいことが
立て続けにあったりした


もちろん
そうしたキライは
誰にとっても
どこにいてもあるが
前任者はこれが
原因でうつ病になり
その仕事を抱えきれず
投げ出してしまっていた
覚悟はしていたが
引き受けたのち
自分で約束してない期限が
あからさまになり
おいつめられるのは
うれしいには程遠い

自分自身の責任でない事を
請け負い引受けてしまう
その流れとやり方は
少年時代から
否応ない事態に追い詰められ
やらざるをえなかった
そのパターンだ

自然な流れだったら
楽しくやれたかもしれないが
今さらで悲しいけれど
我流に追い込まれて行く
小さな子どもは
絶対にやりたくないと
どうしても言えず

運命はその手口を
知ってか知らずか
いや
僕自身がその手口を手なずけ
年月を経てその轍わだちに
足を取られて行く
ことにも気づかず
自信やうぬぼれの鋳型へと
おのれでどんどん拍車をかけ
乗り続けて行ったのだ



海から遠く離れた広い平野の
東西を真横に切り取る
天候気象に敏感な武蔵野線沿線で
冬が近づいた午後
車両やホームで
西からの黄金の太陽光が
この網膜を振るわせ
乾いた空をまばゆく写し
色づく樹々の葉は美しく
赤色も黄色も青空と接し
錦秋の季節の自然を
余さず映し出していた

それらはまるで
うぬぼれて生き延びるしか
手立てをもたなかった
そのままの自分を
いつくしみ
いたわりつくし
繰り返し繰り返し
愛しなさいと
おだやかに
話しかけているかのようだった



恐かったから
変速裏ワザしか身につけられず
恐かったから
小手先でしのぎ切ることを確かめ
うぬぼれ
その溝にじわじわと
はまり込んで行く
恐かったから
僕は守りたかった

ああ、そうだったのか。
やっていけなかったんだ
そうするしか
やっていけなかったんだ


本当によくやった
本当によくやった
そうだね
がんばったね
えらかったね
がんばったね
えらかったね