2012年5月4日金曜日

「あー、そう、ややこしいのがあるんだよね。」



青くすみきった空の下
視界が途切れるまで
桜の花の帯が
ゆるやかな波を描き続いている

大きな公園の敷地内では
朱色に塗られたお堂へ向かって
池を跨ぐ橋は
歩く人の波が続き途切れない


「あ、それは裏返して。」

「はい。」

「もう少し右。」

「はい。」

花見の席で持ち寄った
チーズ  唐揚げ ワイン  焼き鳥
プチトマト  リッツ
拡げられた食べ物を
片づけようとする
彼女はかならず
先に言い出し
その受け応えが
記憶に残る

指図する人とそれを受ける人
各々関係を保ち
指図したがる人が
受けたがる人を従わせ
かならず上・下を決め
お互いに力を合わせ
感じ合うことはない

上・下をつくり
共感を説くそれが
矛盾なのだ。

いつも指図の彼女は
僕にもその矛先を向けて
頼みもしないのに、問題を
指摘した。

「何か心配なのよ、Yさんも
いってたし。」

「…。」

「理由はわからないけど、
何かあるのよ。」

一方的なのは
指図したがる人の
そのある何かが
成せるワザなのだ。


あー、そう、ややこしいのがあるんだよね。」

誰しもの奥底に潜む何かがあることを
分かち合えそうな人なら
その何かをつまびらかに
したりもするのだが

公園の敷地内その真ん中で
静かにさざ波をたたえる池に
揃ってかしずく
美しいさくらの花のその連なりは
僕ら全員のどす黒いその何かを
瞬間に吸収してしまい
ただ少し僕は引きつって
笑ったのだった。
その場所の数人にはいつも通りの
会話を装う一方通行だったのだろうが
桜の花の幕が僕自身を映し撮った
僕にとっての
劇的な瞬間だったのだ










世界最高の電波塔東京スカイツリー
東京タワーの紅白やライトアップとは違い
全体から展望台も
グレーに光り目立たず
帰宅途中の車両の窓から見るその姿は
この惑星地球のモノとは思えず
百光年先の天体からはるばる飛来し
狙いすましたように突き刺さった
異星人が作り上げた
超高性能ロケットが
窓枠の画面にVFX映像のように
ただ張り付き映っていた









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